江戸時代のベストセラー『養生訓』
今や人生100年とされる時代ですが、わずか300年前、江戸時代の日本人の平均寿命はその半分にも満たなかったといわれています。
いわば人生50年時代。そんな“短命社会”にあって84歳まで生き、晩年に著作を連発するなど精力的に活動したのが儒学者の貝原益軒(かいばらえきけん)。亡くなる前年、83歳の頃にはその健康長寿の心得を著した『養生訓』を出版し、当時のベストセラーに。今も現代語版や解説書が繰り返し出るなど、世代を超えて読み継がれています。
まずは何より「心の養生」が大切養生訓には食欲、色欲を慎み、運動、栄養、休息を過不足なく生活すること、かかる医者を吟味すること、薬と効能と害など具体的な養生の指南が記されていますが、なかでも最も大事なのは「心の整理」であると言います。
“養生の術は、まず心法をよく慎んで守らなければ行われないものだ。心を静かにして落ちつけ、怒りをおさえて欲を少なくし、いつも楽しんで心配をしない。これが養生の術であって、心を守る道でもある。心法を守らなければ養生の術は行われないものだ。それゆえに、心を養い身体を養う工夫は別なことではなく、一つの術である”
“心を平静にして徳を養う 心を平静にし、気をなごやかにし、言葉を少なくして静をたもつことは、徳を養うとともに身体を養うことにもなる。その方法は同じなのである。口数多くお喋べりであること、心が動揺し気が荒くなることは、徳をそこない、身体をそこなう。その害をなす点では同様なのである”