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お盆
佐野家墓所(長楽寺)
佐野家墓所(長楽寺)
佐野家墓所(長楽寺)
佐野家墓所(長楽寺)
佐野家墓所(長楽寺)
大正時代 大井神社玉垣建設
昭和30年代 忠霊塔(岡出山公園)
報告
佐野鉄治(大正10年11月10日生~平成31年2月26日没)
今宵、あなたは果てなき人生を歩き終え、旅立ちの前夜を迎えている
過ぎし日の思い出はあたたかく、
きっと何ひとつ悔いなきほどにほがらかな笑みを浮かべているのでしょう……
尋常小学校を出たのは十二歳のときだった
まだまだ遊びたい年頃であるし、
上の学校へ進みたい、という思いもあったのかもしれない
けれどあなたは佐野家の長男坊、
下には七人のまだ幼い弟さんや妹さんたちがいる
だから甘えたい気持ちは胸の奥にしまいこみ、
少年だったあなたはがむしゃらになって働くぼかりだった
当時はクレーンやリフトなどもない時代、
まだ華奢な体に重い石材を担ぎ、あなたは額に汗を滲ませる
そうして一生けんめい働いて、
もらったお給料のほとんどは弟さんや妹さんたちの学費に充てる
でもそれでよかった
あの頃からあなたは家族のために生きていた
そしてそれは一・枝さんと所帯を持ち、子供たちの父親となっても同じ
佐野石材の四代目社長となってからも、
あなたの真面目さ、職人としての心意気は少しも変わらなかった
モノを売るのではなく「こころ」を売るのだと、お客さんを大事にする
あなたの誠実で実直な働きぶりは、
お客さんや仲間からの信頼も厚かったのでしょう
だからこそ静岡護国神社の石垣造りなど大きな仕事を任されたり、
あるいは遠く他県での仕事も依頼されたのでしょう
そうして納得のいく仕事ができたなら、
お客さんに喜んでもらえたなら心すがすがしく微笑む
根っからの職人だった
いつだってあなたはお天道様に胸を張る、
まさに「昭和の造り人(つくりびと)」だった
仕事から離れれば、温厚で飾らない笑顔の「てっちゃん」
たくさんのお仲間と心を通わせ、笑顔を交わし合う
あなた自身は下戸だけどお酒の席は大好き、
お仲間たちとお喋りを弾ませワイワイ賑やかに盛り上がる
カラオケの十八番は「私のラバさん」、
気持ちよさそうに歌って踊り、そんなあなたに皆が心を和ませられる
耳を澄ませぼ聴こえてくる
あなたのあたたかな歌声は、今も懐かしくみんなの胸に届いてくる
ボランティアの交通指導員を長年にわたって務める
雨の日も風の日も、通学路に立って小学生たちを見守る
「おはよう!」とあなたに声をかけられれば、
小学生たちも元気いっぱいに「おじさん、おはよう!」と挨拶をする
どんな笑顔だったのでしょう
小学生たちを見守るあなたの眼差しは、どれほど優しかったのでしょう
そうしてあなたはその優しさで、生涯妻の一枝さんを大事にする
苦労も喜びも分かち合い、
幾歳月(いくとせ)を越えてともに歩んできたあなたと一・枝さん
二人は町内でも評判になるほどずっと仲良しだった
旅行もたくさんした
齢を重ね旅行ができなくなれば、二人で手を繋いでお散歩をした
そしてそんな仲睦まじい姿に、
皆があたたかい気持ちになれるのだった
一生けんめい働いて
、人を愛し、人に愛されたあなたの人生
そんなあなたの生き方を、
子供たち、お孫さんやひ孫さんたちはずっと見てきた
ならぼその生き方は「道しるべ」となる
九十九年の道を生き抜いたあなたの背中は、
これからもずっと家族の道を示してくれる「しるべ」となるのでしょう
そんなあなたを偲びたい
紡いだ思い出のひとつひとつを、
私たちは今宵そっと懐かしみたいのです
そう、この胸の奥、あなたの笑顔をしっかりと思い出しながら……